2008年1月1日(火)語らいの家通信No.70より抜粋


■年頭にあたって
代表理事 坪井 信子
明けましておめでとうございます。
皆様お元気で新しい年を迎えられたことと存じます。今年もよろしくお願いいたします。
“その人がその人らしく地域でいつまでも安心して暮らし続ける”当法人の理念です。

介護保険を使わないで、元気であること、そのために体を鍛える、毎日歩く、筋力アッププログラムに参加する、又頭を鍛える、能力アッププログラムや心を元気にする回想法プログラムに参加する、これ等は元気高齢者、特定高齢者の方々が参加しているプログラムです。参加することも大事ですが、大切なことは、プログラム終了後も、いかにその人なりに継続するか、せっかく出来た人間関係を大切にし、馴染みの関係を作ってゆくことが、高齢期を安心して暮らすことのポイントになるのではないでしょうか。
又、昨年は“団塊の世代”の人々が定年と共に地域での人材不足に一役担えるのではないか、と期待して活動した一年でした。今年は、それらの方々がボランティアや福祉の現場を支える担い手となると共に、自分自身の介護予防になるのではないかと考えます。
人材不足の解消だけでなく、介護現場で経験したことが必ず将来の自分自身に返ってくることでしょう。

さて、もし要介護になったら、通って(通所)、泊って(ショートステイ)、時々来てくれる(訪問介護)サービスがあり、そこにはいつも馴染みのスタッフがお世話する“小規模多機能的サービス”があり、今までのなじみの関係を生かし、既存のサービスを利用しながら、いつまでも安心して地域に住み続けることを支えることの大切さを平成20年も大事にし、継続して行きたいと思います。
皆様のご健康とご多幸を心より祈念申し上げます。

■東京都認知症拠点支援モデル事業における「家族会」と「サロン日ようび」について

10月より始まった上記モデル事業の「家族会」では、10月、12月アドバイザーとして浴風会病院の古田伸夫医師をお招きしました。病院ではゆっくり話せないことが相談できる、とどの家族も真剣に相談されていました。特に、薬の使用についての質問は多く、
又継続的にフィルムを取る必要性のことや、病気の進行状況など先生はとても分かりやすく丁寧に答えで下さり、どの家族からも大変好評でした。引き続き、来年度も偶数月の第2土曜日に開催する予定です。
一方、「サロン日ようび」ですが、3ケ月経って、利用者は毎回2,3名です。レベル的に重度の方が多く、普段月曜日から土曜日までデイサービスを利用しているのですが、デイサービスのない日曜日をどのように過ごすか、介護負担の大きいご家族が利用しています。
プログラムとしては、昼食(各自お弁当持参)を挟み、歌を唄ったり、小一時間散歩し、おやつを頂いた頃、ご家族のお迎えになります。スタッフは現在看護師とプログラム担当者、時々ボランティアが入りますが、ボランティア不足が否めません。認知症重度者の歌や散歩のお世話には経験あるボランティアが必要であり、現在募集中です。

■グループホーム便り

「おせち料理は手作りで!」をモットーに、今年で3回目のお正月を迎えます。
29日に大きな鰤が一匹届き、下ろすところから始まります。お刺身を醤油、地酒、すり胡麻のたれに漬け込み、2日の夜食べます。塩ぶりは、ぶり雑煮にします。魚のあらは、当日吸い物やぶり大根で食べます。
30,31日は、田作り、たたきごぼう、紅白なます、昆布巻き、伊達巻、紅茶豚、根菜類の煮物、など、おせち料理のほぼ8割を手作りします。入居者やご家族、スタッフが三日間で食べる量は、延べ100人分ですが、毎年デイサービスの台所が調理場となり、今年は料理好きのスタッフやご家族に「お重詰め」まで手伝って貰い、今年も31日の除夜の鐘を聴きながら、出来上がりました。
お正月三が日、入居者やご家族が“やはり手作りは美味しい!”と満足げに食べている表情を見ると、来年も又頑張るぞ!と決意を新たにしました。                                                   (ホーム長 坪井信子)

■昨今のグループホーム事情と一年を振返って

皆さん、こんにちは。副ホーム長の市川 裕太です。

一年があっという間に過ぎ、新たな年を迎えました。
昨年を振り返って見ると、グループホームに限ったことではないのですが、福祉の業界で「介護人材の不足」が大きく目立っていた一年ではないかと思われます。

「人材の不足」と「人手の不足」について少し考えてみたいと思います。
物理的な不足(例えば、外出するのに車イスを押す人がいない)、これは「人手不足」(現に人が足りず、どうしようもない状態)です。一方「人材の不足」とは、介護するスキル(技術)を持っている専門職が足りない状態と考えることができます。具体的には、例えばグループホームであれば、認知症やグループホームを理解し、そこで生活する人を支援できる人が足りないということになります。
私たち介護職の専門性は物理的なことに対応するだけではありません。ですから、認知症の人の生活を支える「人材」が必要になります。
「自立を支援する」「尊厳を守る」、こうしたことが社会的にも介護保険法にも取り上げられ、具体的には今、そこで生活している人の立場に立ち、ここで生活する人がそうしたことを実感できる、あるいは、やりたくないことを強制されず、本人が「自分の意思で生きている」と実感できる暮らしの実現が大切なのではないかと思っています。

そう考えると、働く中で、「人が足りない」と思うことはあるかもしれませんが、人が足りないのはどこで働いても同じで、いったいどのくらい人がいれば足りるのだろうと思ってしまいます。確かに人がいることによって、様々なことを実現できる可能性が広がります。しかし、認知症という病気を抱える人にとっては、人が多くいることよりも、むしろ、この人(職員)がいるから「安心」できる、その人がいると不安が解消される、あるいは自分の意思を行動に移せる、などその人を理解し、その人の生活を見守ることができる職員が求められると思います。毎日決った人員で働いている中であっても、その人員の「数」よりも、そこにいる「人」に生活する人は大きく影響される毎日なのではないでしょうか。人員の一人が欠けることにより、物理的に不可能なことが生じます。それは大規模施設にしても、グループホームのような小規模な施設にしても、人がいる、いないによって生活の幅(可能性)は大きく異なるでしょう。しかし、いくらそうしたことが充実されたとしても、個人の目に見えない気持ちを汲み取ることができるのは、その気持ちを汲み取ろうとする気持ちが持てる人でなければできないのではないでしょうか。これが「人材」として求められることだと私は思います。

「人材」については、この「かたらいの家」でも課題です。
昨年を振り返ると、かたらいの職員も入れ替わりは多かったように思います。しかし、今残っている、あるいは新たに入った職員は、これまで以上に熱心な方が多く、貴重な「人材」になると私は思っています。
また、私個人としてはそうした職員とチームとして働く中で、共に成長できるように育み、いつもその先に生活する人が安心してホームで暮らせるようにと願っております。
かたらいの理念「その人がその人らしく地域でいつまでも安心して暮らし続ける」の実現に向け、今年も精一杯頑張りますので、どうぞ宜しくお願いします。                                            (副ホーム長   市川 裕太)