2007年10月1日(月) 語らいの家通信 No.69より抜粋


■東京都「認知症支援拠点モデル事業」に選定されて(坪井 信子)

語らいの家がミニデイとして活動を始めた平成11年頃は、認知症は治らない病気であり、病院に行っても適切な治療を受けることはほとんどむずかしい状況でした。それから8年経って、対応によって周辺症状は治まり、落ち着いてくることが分かってきました。
他の病気と同じように早期に発見し医療につなぐ、又予防の可能性もあるのではないか、その人自身が持っているまだ失われていない能力を生活の中で生かすことが出来るのではないかとの思いから、4年前から「食事作り」による脳の活性化に取り組んだ結果(料理プログラム)、はっきりした抑制効果が出てくるようになりました。認知症の啓蒙・啓発としての勉強会、そして実践として進行を抑制するプログラムを車の両輪のように取り組んできた6年でした。
今回東京都の「認知症支援拠点モデル事業」に選定され、その中で認知症の人を地域で支えるインフォーマルサービスとして
・サロン日ようびの開催
・あんしん生活マップ作り
・家族相談会の開催
・小中学生を対象に「現場体験」と認知症の人を理解するための勉強会、を行うことになりました。
このプログラムは、今まで当法人がNPOとして介護保険事業以外の部分で、法人の使命として地道に活動してきた結果だと考えます。このモデル事業サロン日ようびや、あんしん生活マップ作りの担い手になる人はボランティアで、現在アンケートを実施していますが「団塊の世代(シニア)」の人々にも協力を呼びかけ、幅広い年齢層の参加に期待しています。

■世田谷区介護予防事業「筋力アップ教室」始まる

当法人は、平成19年度世田谷区介護予防事業「運動器の機能向上プログラム」(略称「筋力アップ教室」)実施事業所に選定されました。8月から既に始まりましたが、毎週月曜日午後、グループホーム3階の機能訓練室で全14回のプログラムを1教室として、年度内に2教室行います。
参加者はあんしんすこやかセンター推薦による特定高齢者の方々10名です。指導には健康運動指導士資格を持つ佐野公美子先生と運動指導員のアシスタントを迎え、要介護にならないよう、いつまでも元気でいられることを目的として体操を行います。
プログラムには、体操の他に、たま歯科医院の杉原先生による口腔ケアについての講義、管理栄養士、長島優子さんによる「栄養改善について」の講義も含まれます。
3ケ月余のプログラムが終わる時には、参加者の体力が最初の体力測定値を大幅に上回ることを期待しています。

■心を元気にする「回想法プログラム」

当法人と世田谷区では10月からあんしんすこやかセンター推薦による高齢者を対象に、「回想法」を用いた心を元気にするプログラムを始めることになりました。
今年1月から同様のプログラムを試験的に実施したところ、参加者を含め大変好評を博したため、介護予防事業として世田谷区との協働でデイサービス語らいの家で10月から毎週土曜日の午後、8回に亘って行われます。
大きなテレビ画面に3Dのバーチャル(立体)映像が映し出され、昭和30年代の家庭の中にあるラジオのほか、出始めたテレビ、冷蔵庫、洗濯機(昭和の三種の神器)やちゃぶ台など懐かしの場面が再現されます。
また、参加者からその当時の思い出、生活、当時の物価、通貨や記憶に残っている出来事など、次々と皆さんの記憶が甦って、これが高齢者の心の「活性化」につながると言われています。
そして家に閉じこもりがちな高齢者の外出機会を増やし、心が元気になるというのがこの「回想法」の目的の一つです。最近では各方面から「回想法」が注目されており、世田谷区でも成果を見ながら積極的に進めていきたいとしています。語らいの家で行う「回想法」には臨床心理士をリーダーとして行いますが、毎回事前・事後の打ち合わせ、反省会をしっかり行い、参加される方々お一人お一人に行き届いたケアを行いますので、その効果が期待されます。

■東京都「認知症支援拠点モデル事業」に当法人が選定される

東京都では都内の認知症の人への支援として、民間の事業所(5ケ所)で認知症支援拠点のモデル事業を行うことになり、当語らいの家がその一つに選定されました。
当法人では、世田谷区内に「地域で認知症の人を支える仕組みづくり」を行うことを目的として
1) 「支え合いマップ」の作成、
2) 認知症の人と家族のための「サロン日ようび」の開催、(毎週日曜日)
3) 専門のアドバイザー(医師)が相談に応じる家族会の実施、(毎月1回)
4) 小中学生のための現場体験と認知症勉強会の開催
などを盛り込んだ提案を行いました。
今回の提案の他、当法人が長年手掛けてきた認知症の啓蒙・啓発への地道な取り組みの実績も高く評価されたのではないかと思います。
東京都では認知症高齢者の生活場所として、65.7%の人が「居宅」で、10.2%が特別養護老人ホーム、24.1%がその他(認知症グループホーム、老人保健施設など)で過ごされているというデータを発表しています。特に認知症の人にとって居宅で安全に安心して暮らせる街づくりは今後必要とされることで、2年間の期間限定でこのモデル事業を実施することになりました。

■「家族会」と「サロン日ようび」開催

当法人では認知症の人をかかえる家族のための「家族会」を始めて今年で7年目です。
認知症の人を支える一番身近な人は“家族”です。その家族が認知症という病気を理解しようとし、又どのように対応したらよいか迷いの中で暮らしていることが多いのです。病院で病気のことを専門の医師に時間をかけて相談したくても、他の患者もおりなかなか出来ない。もし少人数の場で、直接専門医師又は専門のアドバイザーと直接相談できたらという願いから月1回の「家族会」を始めましたが、今年は東京都認知症支援拠点モデル事業の一環として10月から再来年3月まで行うことになりました。
又、認知症の人が日中利用するデイサービスのほとんどは、日曜日休業です。家族が日曜日に短時間買い物に行ったり、休息の時間を過ごせるように、認知症の人を安心して短い時間で預ける「場」は、必要だと思われます。そのような時にサロン形式の時間単位で利用できる場として、「サロン日ようび」を開催することにしました。
担い手は認知症サポーター養成講座に参加し、又ボランティア研修をうけた方を考えています。
認知症の人の家族にとって、日曜日に介護保険外で安価で安全に過ごせる場所があれば、どんなにか安心できることでしょう。
※お世話係ボランティア募集しています。